銅・アルミブスバーのパンチとダイのクリアランス
板厚 6–20 mm の銅バー・アルミバーで片側クリアランスをどう設定するか。片側 5–12 パーセントの帯域と実用値 10 パーセント、だれ・せん断面・破断面・バリの読み方、二次せん断帯と抜きカスの上がり、厚板の小穴に必要な補正、そして ISO 13715 によるバリ高さの図面指示まで。
読了目安 11 分更新日 2026-08-18
クリアランスとは、パンチの刃先とダイの刃先との隙間です。値そのものはひとつの数字にすぎませんが、 取り違えやすく、ブスバー加工では他のどの金型パラメータよりも高い頻度で誤って設定されています。 公表されている指針の大半は板厚 1–3 mm の板金プレス向けに書かれたものです。ブスバーは板厚 6–20 mm の、軟らかく延性があり加工硬化する銅です。百分率はそのまま移せます。その結果は移せません。
慣習はふたつあり、両者は 2 倍違います。両側合計 のクリアランスは、ダイ穴径とパンチ寸法との差です。 片側 のクリアランスはその半分で、周囲の任意の一点における半径方向の隙間を指します。「銅、20 パーセント」と記した供給業者の一覧表と、10 パーセントで運転している工場とが、まったく同じ金型の ことを述べている場合があります。ある数値を何かと比べる前に、それがどちらの慣習によるものかを 確かめてください。本稿では終始、片側の値を用い、引用元の数値は必要に応じて換算しています。
切口が語っていること
ブスバーに打ち抜いた穴には 4 つの領域があり、穴の内壁で観察でき、抜きカス側にも同じものが鏡像として 現れます。これを読むことが最も速い診断手段であり、費用もかかりません。
だれ はパンチが入る側の面に生じます。材料が切れる前に降伏して穴の中へ引き込まれ、丸みを帯びた縁が 残ります。だれの深さはクリアランス、刃先の鈍り、材料の軟らかさとともに増えるため、それ自体が欠陥という わけではありません。焼なまし銅では必ず見えます。
せん断面 はだれの下に現れる光沢のある帯で、穴の内壁がパンチの側面にこすられた部分です。滑らかで 真直ぐであり、寸法上の穴とは この部分 のことです。Dayton Lamina の金型指針は、適正なクリアランスを、 抜きカスのせん断面が板厚のおよそ 3 分の 1 を占め、それと一直線に揃った均一な破断面が続く状態を生む ものと説明しています。これはブスバーの合格判定基準としても使えます。
破断面 は、光沢のない粗い残りの部分です。き裂がパンチ側の刃先からダイ側の刃先へ進むため斜めに走り、 その角度を決めるのがクリアランスです。破断面が真直ぐで均一、かつせん断面と連続していれば、2 本のき裂が 出会ったということです。目的はそれに尽きます。
バリ はパンチが抜ける側の面に生じます。最後に残った材料が、せん断されずに伸びて引きちぎられたもの です。バリの高さはクリアランス、刃先の摩耗、材料の軟らかさとともに増えます。
他より重要な不良の兆候が 2 つあります。二次せん断帯、すなわち内壁の途中に段差を伴って現れるもう 1 本の光沢帯は、パンチ側のき裂とダイ側のき裂が同一平面で出会わず、その間に残った材料が二度せん断された ことを示します。これはクリアランス不足です。大きなだれに、薄く不揃いなバリと、ごく短いせん断面 が 伴えば、クリアランス過大です。
新しい金型を立ち上げるたびに抜きカスを 1 枚残し、材料、板厚、クリアランスを記して保管してください。 疑わしい抜きカスを良品と見比べるのに 15 秒あれば足り、金型を再研磨すべきなのかクリアランスが誤って いるのかという議論は、たいていそれで片づきます。
板厚に対する百分率としてのクリアランス(片側)
実務で使う式は次のとおりです。
c = k × t (clearance per side, mm)
die opening = punch size + 2c
ここで t は板厚、k はクリアランス比です。銅ブスバーの場合、k は片側 5–12 パーセントの帯域に
収まります。5 パーセントを下回ると二次せん断と熱による損傷の領域に入ります。厚いバーでおよそ
12 パーセントを超えると、だれと抜きカスの管理が支配的になりはじめます。片側 10 パーセント前後が一般的な
実用値で、半硬質材について金型メーカーの多くが落ち着く値でもあります。
開閉装置で実際に出てくる板厚について、この帯域を計算したものが次の表です。
| 板厚 | 片側 5% | 片側 8% | 片側 12% | 13 mm パンチ、片側 10% のダイ穴径 |
|---|---|---|---|---|
| 6 mm | 0.30 mm | 0.48 mm | 0.72 mm | 14.2 mm |
| 8 mm | 0.40 mm | 0.64 mm | 0.96 mm | 14.6 mm |
| 10 mm | 0.50 mm | 0.80 mm | 1.20 mm | 15.0 mm |
| 12 mm | 0.60 mm | 0.96 mm | 1.44 mm | 15.4 mm |
したがって板厚 6 mm の銅ならおおむね片側 0.3–0.7 mm、板厚 10 mm の銅なら帯域の上半分を使って おおむね片側 0.8–1.2 mm となります。薄板の仕事から来た感覚では、これらのダイ穴径はパンチに対して 不安になるほど大きく見えます。これで正しいのです。板厚 10 mm の銅に 13 mm のパンチ、片側 10 パーセントであればダイは 15 mm であり、できあがる穴は 13 mm に近い寸法になります。内径を決めるのは ダイではなくせん断面だからです。
公表されている表にはばらつきがあり、それには理由があります。Conic の金型指針は、サーボプレスおよび 油圧プレスにおける銅のクリアランス比を 両側合計 で 0.20–0.25 とし、板厚 3.2 mm を超える場合は 1.4 倍する旨の注記を添えています。文字どおり受け取れば、厚い銅では片側 14–17 パーセントになります。 UniPunch は銅について、半硬質で板厚の 20 パーセント、硬質で 25 パーセントを挙げており、これも両側合計 です。Dayton の最適クリアランスに関する検討は薄板プレスを対象としたもので、さらに高い値を示します。 このばらつきは杜撰さではなく実質的なものです。最適値は、金型寿命を買うのか、バリの最小化を買うのか、 寸法の再現性を買うのかによって変わり、この 3 つは同じクリアランスで最良にはならないからです。
クリアランスが小さすぎる場合
パンチ側のき裂とダイ側のき裂は、それぞれ自分の刃先から出発して互いに向かって進みます。クリアランスが 適正であれば両者は同一平面上に乗って合流します。クリアランスが不足すると両者はすれ違い、その間に残った 材料は二度目の事象として引きちぎられることになります。その結果が二次せん断帯であり、粗く不均一な内壁で あり、パンチに対して小さめに仕上がる穴です。
部品側より金型側の影響のほうが深刻です。銅は破断貫通の後にパンチ側面へ弾性回復するため、クリアランスが 小さいと穴がパンチを締め付け、毎ストロークが締まりばめの状態で終わり、戻り行程でそれを力ずくで抜くこと になります。ストリップ力が上がり、側面が摩耗し、先端部に摩擦熱がたまります。Dayton の現場事例では、 まさにこの機構によって先端の後方に変色が生じ、パンチの熱処理が損なわれて、刃先そのものが摩耗するはるか 手前で寿命が尽きています。程度がひどければ先端が疲労して脱落します。
摩耗の多くが生じるのは切断行程ではなく戻り行程です。Dayton はこれをパンチ全摩耗の最大 3 分の 2 と しており、その大きさは穴が側面をどれだけ強く締め付けるかだけで決まります。銅で帯域の下限を使うべきで ない最も強い理由がこれです。銅は軟らかいので、プレスは何も訴えません。訴えるのは金型費用のほうです。
クリアランスが小さいと最大荷重も上がります。板厚のうちより多くの部分が破断ではなくせん断で切られる ためです。能力に余裕のない機械では、図面群の中で最も厚いバーでラムが止まるという筋書きも十分ありえます。
クリアランスが大きすぎる場合
材料は切れる前にダイの中へ曲げ込まれます。だれが大きくなり、せん断面は短くなり、内壁の大部分を破断面が 占め、バリの高さが上がります。穴は大きめに仕上がり、その縁はもはや直角ではありません。その穴がボルト 接続部の接続面にかかる場合には問題になります。
運転上の不具合は抜きカスの上がりです。クリアランスが大きくなるほど抜きカスはダイに対して緩くはまるように なり、落下せずに戻り行程でパンチとともに上がってきます。それがバーの上に乗って次の穴に打ち込まれたり、 ストリッパに噛み込んだりします。銅の場合の機構は、油膜による付着と、そった抜きカスとパンチ端面との間に できる真空です。鉄鋼の仕事で通常 3 つ目の原因となる磁気吸着は、ここでは当てはまりません。
対策は機械的なものです。パンチ端面にばね式のエジェクタピンと側面の通気穴を設ける、抜きカスをそらせて 自身のスプリングバックで外れるようにせん断角を付ける、あるいは切刃部を短くしてその下を細い逃げにし、 抜きカスを掴んで上がれないようにしたダイを使う、といった方法です。下死点でのパンチのダイへの進入量を 0.5–0.8 mm 程度に抑えることも有効です。深く進入するほど戻り時の真空が大きくなるためです。対策の全体像 と、それぞれがどれだけの効果を持つかは 金型寿命と穴あたりコスト にまとめています。
厚いバーの小さな穴
ブスバーには、薄板プレスにはない幾何形状の問題があります。M12 のボルト通し穴は 13 mm か 13.5 mm です。 板厚 10 mm のバーでは穴径と板厚の比がおよそ 1.3、板厚 12 mm ではおよそ 1.1 になります。ずんぐりとした 深い穴であり、板厚 3 mm の板に開けた 25 mm の穴のようには振る舞いません。
穴径と板厚の比がおよそ 1.5 を下回ると、抜きカスは曲がりにくく、離れにくくなります。パンチの荷重が上がり、 せん断面は長くなり、バリは大きくなり、穴は小さめに仕上がります。Dayton の指針は、穴径が板厚の 1.5 倍まで 下がった時点で公称クリアランスに片側 1 パーセントを加え、穴径が板厚と等しくなるところではおよそ片側 4 パーセントの上乗せまで増やす、というものです。板厚 12 mm の銅に 13 mm の穴を開ける場合、この補正は 省ける類のものではありません。同じ公称百分率で、板厚 6 mm では申し分なく働く金型が板厚 12 mm では 具合が悪くなる理由もここにあります。
PASS Stanztechnik の金型寿命データも、別の側から同じことを示しています。同社のディレーティング係数は、 板厚の 1.5 倍より小さい加工形状で 0.6–0.8、板厚の 1.0 倍より小さいもので 0.3–0.5 です。厚いバーの 小さな穴は、本来得られるはずの金型寿命の半分から 3 分の 2 を失わせます。
打抜き力と、先端形状がそれに与える影響
必要な力は、せん断される面積に材料のせん断強さを掛けたもの、すなわち F = perimeter × t × τ、丸穴で
あれば F = π × d × t × τ です。計算例とせん断強さの参考値は、対になる記事
ブスバー打抜きのプレス力選定 にまとめてあり、計算その
ものは ブスバー打抜き力計算ツール で直接実行できます。
これにクリアランスが関わり、先端形状も関わります。平面のパンチは周長全体を一度に切るため、力の全量が 尖頭として立ち上がり、破断貫通時の除荷も激しくなります。パンチ端面にせん断角を研削すると切断のタイミングが ずれて最大荷重が下がりますが、厚いブスバーでは販促資料が示唆するほどには下がりません。H. Weiss の せん断係数の表は、板厚 1/4 in(6.35 mm)の材料について、せん断深さ 1/16 in(1.6 mm)で係数 0.90、 3/32 in(2.4 mm)で 0.85、3/16 in(4.8 mm)で 0.65 としています。厚い銅に浅くせん断角を付けて得られる のは 10 パーセントです。35 パーセントを得るにはバー板厚の 4 分の 3 に迫るせん断深さが必要で、それは長く 折れやすい先端になります。
平面 は最大荷重が最も高く、穴は最も直角に近く、抜きカスは最も平らになります。片刃せん断、 すなわちパンチを横切るように斜めに研削した端面は、力の低減幅が最も大きい一方でパンチを横に押すため、 ずんぐりしたブスバー用パンチではその横荷重がガイドとストリッパにかかります。山形、すなわち中心線に 対して対称な形状は横荷重を打ち消し、最も小さい穴を除けば通常の選択になります。穴あけでは、せん断角を ダイではなくパンチに付けてください。角度を持つ側が自分の側の切口を歪ませるためであり、穴あけでは抜きカスが 廃却材でバーが製品だからです。
アルミニウムは銅ではなく、6101 は 1350 ではない
アルミニウムでは 2 つのことが変わります。せん断強さが大きく下がること、そしてその下がり方がブスバーに 使われるグレード間で一様でないことです。
軟質の 1xxx 系導体グレードはせん断強さで 60–80 N/mm² 付近にあり、UniPunch は 1100-O を 62 N/mm²、 1100-H14 を 76 N/mm² としています。1350-H111 のバーについてはこれで桁が合います。合金化して熱処理した バーは別の材料です。6101-T6 の公表せん断強さはおよそ 22 ksi、約 150 N/mm²、6061-T6 は 207 N/mm² と されています。「アルミニウム、80 N/mm²」でプレスや金型を選定しておいて 6101-T6 のバーを渡されると、 実際に必要な力は 2 倍近くになります。加圧力の計算に入る前に、合金と質別を確定してください。
アルミブスバーのクリアランスは同じ板厚の銅よりわずかに小さく、片側でおおむね 8–10 パーセントです。 せん断強さが低いぶん破断が進みやすいためです。アルミニウムの問題は凝着です。工具鋼にかじりつき、パンチ 側面に堆積し、その後の百穴ほどに傷を付けます。コーティングは有効で、PASS Stanztechnik は適切な コーティングについて金型寿命の係数 2.0–4.0 を挙げています。ここでいう適切なコーティングとは、汎用の TiN ではなくアルミニウム専用のグレードです。潤滑はさらに有効です。潤滑なしで運転した場合の PASS の ディレーティング係数は 0.4–0.6 であり、アルミブスバーを乾式で打ち抜くのは見かけだけの節約です。
銅の質別も同じように効いてきます。EN 13601 のもとで、Cu-ETP のバーは 引張強さ 220–260 N/mm² の軟質焼なまし R220、240–300 N/mm² の半硬質 R240、290–360 N/mm² の硬質 R290 として供給されます。ひとつの質別に合わせ込んだ金型が別の質別では最適でなくなる程度には離れた値です。
図面へのバリの指示
ブスバーの図面はバリについて何も述べていないことが多く、そのうえで検査が、書かれていない基準に照らして 部品を不合格にします。これを正しく指示する手段が ISO 13715、製図 — 不特定形状のエッジ — 指示および 寸法記入、2017 年発行の第 3 版です。
この規格は、エッジに付ける図記号と、その中に記す符号および数値を定めています。意味を担うのは符号です。
- + は材料の残りが許容されることを示し、規格はこれを パッシング と呼びます。バリは外側パッシングの 特別な場合として明示的に定義されています。正の値をひとつだけ記した場合、もう一方の限界は 0 であり、 アンダーカットは許容されません。
- − は材料の除去が必要であること、すなわち アンダーカット を示します。負の値をひとつだけ記した 場合はパッシングが許容されず、バリはいっさい認められず、エッジを落とさなければなりません。
- ± はいずれも許容されることを示し、寸法値を伴う場合にのみ使用できます。
寸法値は許容される最大のずれで、符号の後ろに記します。上限と下限を上下に並べて両方示すこともできます。 ISO 13715 は、パッシングまたはアンダーカットを許容する 方向 を指示する方法も定めており、ブスバーで 最も効いてくるのはこの規定です。ボルト接続部の接続面にあるバリと、自由面にあるバリとでは、問題の性質が 違うからです。
ISO 13715 が教えてくれないのは、どの数値を書くべきかです。それはエッジの機能から決まります。
- ボルト接続部の接続面: バリは 2 枚の導体の間に挟まって両者を引き離し、接触面積を減らして接続部の 抵抗を上げます。IEC 61439 が外部導体接続用端子に 70 K の温度上昇限度を 定めている以上、接続部の抵抗は見た目の問題ではなく適合性の問題です。バリを出す側を指定し、その値も 厳しく指定してください。
- ボルトの軸が通る穴の内壁: ここのバリは組立の妨げになり、ボルトに傷を付けることがあります。管理は 中程度で十分です。
- 絶縁バリアや空隙に近いエッジ: IEC 60664-1 の空間距離・沿面距離の 問題です。鋭く立ったバリは局所的に電界強度を高めるためです。そしてここは、面取りを要求している規格が あると誰かが主張しがちな場所でもあります。そのような規格はありません。エッジの処理は絶縁耐力の規定を 満たすための手段であり、それ自体が要求事項なのではありません。
長方形断面ブスバーの穴位置と穴寸法、およびねじ接続の基礎データを定める DIN 43673-1 に従った穴配置では、バリの指示は穴配置と同じ図面に載せるべき ものです。
打抜きだけでは保持できないほど限度が厳しい場合の答えは、クリアランスをひたすら詰めることではなく後工程 です。板厚 0.5–50 mm、幅 100–800 mm のバーに対応する BND800-2 のような機械でブラシまたはベルトによる バリ取り を行えば、議論そのものがなくなります。クリアランスを詰めて 0.05 mm のバリを追いかければ、パンチ寿命と穴の品質を同時に失います。
機械上での設定と確認
クリアランスはプレスではなく金型に属するものなので、 打抜き・切断機 では、パンチとダイを発注した 時点で決まり、取り付ける時点で確認することになります。表示を信用せず、パンチとダイを別々に測って クリアランスを計算してください。端面ではなく側面を研磨したパンチは、刻印されている寸法ではなくなって います。次に同心度を確認します。片側の値は全周にわたって成立していなければならないためです。公称 クリアランス 0.8 mm でパンチが 0.1 mm 偏心していれば、片側 0.7 mm、反対側 0.9 mm となり、バリは見て わかるほど非対称になります。位置決め精度 ±0.05 mm を保持する 多ステーションタレットを備えた加工センタ では、ステーションの芯出しとタレットの清浄さもクリアランスの連鎖の一部です。
この局所的な塑性流動がバーの真直度に何をもたらすかは 加工後の平面度、真直度、ねじれ で扱っています。 穴あけが工程全体のどこに位置するかは ブスバーの打抜き の概要をご覧ください。
