銅の質別と最小曲げ半径
EN 13601 の質別 R220、R240、R290 が銅ブスバーの最小曲げ半径をどう決めるか。伸びで曲げひずみを見積もってはいけない理由、材料証明書の読み方、大断面材の質別に効く寸法効果、そして焼なましが誤った答えになる場面まで。
読了目安 10 分更新日 2026-08-18
「銅ブスバー、100 × 10、3 メートル」は、発注できる仕様ではありません。金属と断面は指定していますが、 図面の半径まで曲げられるのか、それとも初品で外側の面が割れるのかを決める、ただひとつの特性が抜けています。 その特性が質別であり、工場の問題である前に調達の項目です。バーがいったんラックに載ってしまえば、炉なしに それを変えられる人はいません。
以下では、曲げ半径の指針を、板厚だけではなく、注文書と材料証明書に現れる質別記号に対応づけて示します。 板厚も効きますが、それは 2 番目の変数です。
EN 13601 の記号が意味するもの
EN 13601 は電気用途の銅の棒、板、線を対象としており、ブスバーの仕事で関心が あるのは Cu-ETP、材料記号 CW004A です。この規格は材料の状態を 2 通りで表し、どちらも証明書に現れます。
R 記号 は N/mm² で表した最小引張強さに対応します。R220 は引張強さ最小 220 を意味します。H 記号 は 最小ビッカース硬さに対応します。H040 は 40 HV 以上を意味します。両者は並行して走るため、対にして書かれ ます。
| 質別 | 引張強さ Rm | 0.2 % 耐力の代表値 | 伸び A50 の代表値 | 硬さの代表値 |
|---|---|---|---|---|
| R220 / H040(軟質焼なまし) | 220–260 N/mm² | ≤ 140 N/mm² | ≥ 33% | 40–70 HV |
| R240 / H065(半硬質) | 240–300 N/mm² | ≥ 180 N/mm² | ≥ 8% | 65–95 HV |
| R290 / H090(硬質) | 290–360 N/mm² | ≥ 250 N/mm² | ≥ 4% | 90–110 HV |
引張強さの範囲は規格のものです。耐力、伸び、硬さの数値は、Cu-ETP についてこれらの記号と並べてミルの データシートが公表しているもので、規定値ではなく代表値として扱ってください。Copper Development Association のブスバー指針は、完全焼なましのブスバー断面の銅について耐力 50–55 N/mm²、半硬質について 170–200 N/mm² を挙げており、軟質側は上表の条材の数値より低い値です。
この表からは 2 つのことが導かれ、どちらも数値そのものより重要です。
第 1 に、この連鎖は一方向です。冷間加工は引張強さを上げ、耐力を上げ、硬さを上げ、伸びを減らします。同じ 行の特性はすべて一緒に動きます。すべてが同じ転位密度から来ているからです。軟質銅の成形性を併せ持つ硬質銅を 買うことはできません。
第 2 に、伸びの列は、強度の列が上がるよりはるかに速く落ちます。R220 から R290 へ移ると引張強さは約 40 パーセント上がり、伸びはおよそ 88 パーセント失われます。この非対称性のために、質別の選定は強度ではなく 成形性の検討に支配されます。
誰も触れない寸法効果
硬質材については、大断面でつまずきやすい注意点があります。得られる最大の強度は断面に依存します。ミルが バーに入れられる冷間加工の量が、その工程で許される断面減少率によって制限されるためです。CDA の指針は、 硬質状態のブスバーを断面積に応じて 250–340 N/mm² の範囲に置き、大きい断面ほど下限寄りとしています。
つまり 30 × 5 のバーの「硬質」と 200 × 12 のバーの「硬質」は、どちらの証明書にも R290 と書かれていても、 同じ材料状態ではありません。大断面のほうが帯域の下寄りにあり、曲げに対してわずかに寛容で、スプリング バックもわずかに小さくなります。実績のある補正テーブルを小断面から大断面へ移す場合、誤っているというより 安全側に振れていると見込んでください。
平曲げの最小曲げ半径
公表されている出発点は、半硬質または硬質の高導電性銅についての CDA の指針で、最小の金型半径を板厚の倍数で 示しています。
| 板厚 | 最小曲げ半径 |
|---|---|
| 10 mm 以下 | 1 t |
| 11–25 mm | 1.5 t |
| 26–50 mm | 2 t |
50 mm を超えるバーは通常まったく曲げられません。CDA は、成形前に局部焼なましを行えば可能であると注記して います。
これらの数値はすでに硬い側の質別を前提としているため、R240 と R290 に対しては安全な下限です。R220 では これより詰められますが、そうする理由はまずありません。板厚の区分が示していないのは質別の軸です。実務で 使う表は、次のような形になります。
| 板厚 | R220 / H040 | R240 / H065 | R290 / H090 |
|---|---|---|---|
| ≤ 10 mm | 1 t | 1 t | 1–1.5 t |
| 11–25 mm | 1 t | 1.5 t | 2 t |
| 26–50 mm | 1.5 t | 2 t | 2.5 t、要検証 |
R220 の列と R290 の列は目安として扱ってください。検証された足場は CDA の表であり、その両側の広がりは 通常の現場慣行を反映したものです。材料、板厚、金型の組合せごとに初品で確認してください。
伸びは質別の順位付けには使えるが、曲げひずみの予算にはならない
曲げの外側繊維における公称ひずみは、形状から直接求まります。
ε = t / (2R + t) = 1 / (2·(R/t) + 1)
R/t = 1 なら 33 パーセント。R/t = 2 なら 20 パーセント。R/t = 4 なら 11 パーセントです。これを伸びの列と 比べてください。R290 は最小 4 パーセントと規定されており、素朴に読めば、外側繊維がもつには R/t が 11 を 超えていなければならないことになります。
そうはなりません。その理由を知っていれば、半径を過大に指定せずに済みます。引張試験が測っているのは、 くびれが自由に発生して進展できる一様な標点距離での破断伸びです。曲げでは、最大のひずみは短い弧にわたって 外表面にのみ存在し、まわりのひずんでいない材料がくびれの発生を拘束します。したがって達成できる曲げひずみは 引張伸びを大きく上回ります。伸び 4 パーセントの材料について、CDA が板厚 10 mm までの硬質銅に 1 t を規定 できるのは、まさにこのためです。
伸びの数値は、質別どうしを順位付けし、どれが先に割れるかを予測するために使ってください。曲げひずみの予算 として使ってはいけません。
不具合の見え方
外側繊維の割れは見分けのつく段階を追って進みます。最初の段階で捕まえられれば、そのロットは救えます。
まず現れるのがオレンジピールです。個々の結晶粒が独立に変形することで、外表面が目に見える肌に荒れます。 それ自体は外観上の問題ですが、外側繊維が限界に近いことを教えてくれます。結晶粒が粗いほど悪化し、粗大な 結晶粒はそれ自体が焼なましのやりすぎの兆候です。
次に、曲げ軸に平行して外面を横切る微細な横割れが現れます。めっきしたバーでは、めっきの切れとしてしか 見えないこともあります。この時点で部品は廃却です。割れは、使用中に疲労荷重が最も高くなるまさにその位置に ある応力集中源だからです。貫通割れは最終段階であり、説明を要しません。
内側の面では不具合の様式が異なり、圧縮による不安定、すなわち座屈やしわとして現れます。平曲げでは、 たいていバーの支持が不十分だった徴候です。立て曲げでは、付随的なものではなく支配的な制約です。
立て曲げははるかに大きな半径を必要とする
ここまでは平曲げ、すなわちバーが板厚方向に折れ、小さいほうの寸法がひずみを支配する場合の話です。同じバーを 難しい向き、すなわち幅方向に曲げると、形状はまったく変わります。外側繊維は中立軸から板厚の半分ではなく バー幅の半分の位置に来て、内側繊維は圧縮下で長く支持されない区間を持つことになります。
実際の根拠は機械の能力表にあります。SMART-603CNC-S は平曲げで 260 × 20 mm、立て曲げで 125 × 15 mm と定格されており、両方の寸法がおおよそ半分になるという この傾向は、ブスバー曲げ設備全般に見られます。立て曲げの最小半径は板厚ではなくバーの 幅 の倍数で表され、 平曲げの値の数倍になるのが一般的です。力学と設計上の代替案については 立て曲げと平曲げの比較 で扱っています。
平曲げの半径の規則を立て曲げに持ち込まないでください。外側のエッジを割る最短の道です。
圧延方向
圧延および引抜きした銅は加工方向に沿った結晶集合組織を持ち、その結果として成形性は方向性を持ちます。板金 成形の一般則がそのまま当てはまります。曲げ軸が圧延方向に直交する向きが有利で、曲げ軸が圧延方向に平行な 向きが割れます。
通常のブスバーでは、これは何もしなくても有利に働きます。バーは長手方向に圧延または引抜きされており、 一般的な横方向の曲げは曲げ軸をバーを横切る向き、すなわち加工方向に直交する向きに置きます。すでに良い向きに あります。
これが自動でなくなるのは、広い板から切り出したバーや、コイルから切り割ったバーです。仕上がったバーの長手 方向が、もとの圧延方向と一致しないことがあります。供給元が引抜きのバーの代わりに切り割り材を入れた場合、 証明書の強度は同じに読めても、曲げの挙動は変わりうるということです。曲げ加工 の 工程記録に、グレードと質別だけでなく材料の形態も記録しておくべき理由がこれです。
材料証明書の読み方
ブスバーに使える証明書は、グレードと規格、すなわち EN 13601 の Cu-ETP CW004A を記載しています。ミルが 両方を示す場合は、質別記号を R240 / H065 のように両形式で記載しています。溶解番号またはロット番号に対して 実測の引張強さ、伸び、硬さを記載しています。IACS に対する百分率で導電率を記載しており、焼なまし材では 100 % 以上、硬引き材では少なくとも 97 % であるべきです。冷間加工は導電率を 2–3 % 失わせるためです。
要求しない限り通常記載されないのが、実測の 0.2 % 耐力です。それが スプリングバックの計算 が必要とする数値であり、R220 ではその許容される幅が最も広くなります。規格は軟質材について耐力の上限を定めており、下限は定めていません。 そのため、適合している 2 本の R220 のバーで、戻り量が 2 倍違うことがありえます。軟質銅を量産で流すので あれば、注文書に実測 Rp0.2 を記載してください。
もうひとつ確認すべきは、その証明書が形式試験ではなく納入ロットについてのものかどうかです。形式試験の 証明書はよくあり、同じ根拠にはなりません。
焼なましが正しい答えになる場面
正当な場面はあります。板厚 50 mm を超えるバーで、成形前に曲げ部を局部焼なましするのが唯一の現実的な経路と なる場合。すでに成形したバーの手直しで、曲げ部が最初の加工で加工硬化しており、同じ位置での 2 度目の曲げが 割れる場合。改修工事できわめて小さい半径が必要で、バーがすでに切断済みであり、代替が廃却しかない場合。
正当な理由ではない、しかしよくある場面もあります。販売店にあったのがそれだったという理由で硬質のバーを 買い、曲げられるようにするために焼なますことです。この順序は冷間加工に代金を払い、それを取り除くために もう一度代金を払い、しかも硬質材が提供していた機械的性質を捨てています。硬質のバーは、支持のない長い区間での たわみに抗し、短絡時の電磁力による永久変形にも抗します。バー全体を焼なませば、R220 の成形性も R290 の 剛性も買っていないことになります。
焼なましを決める前に、技術的な制約が 2 つあります。Cu-ETP はおよそ 150 °C を超えると徐々に軟化し、完全な 再結晶焼なましは通常 400 °C 前後で行われ、そこでは再結晶が数分でほぼ完了します。保持時間を延ばせば結晶粒は 粗大化し、粗大な結晶粒は次の曲げでオレンジピールを生みます。長い焼なましは、材料を軟らかくしながら表面の 仕上がりを悪くしうるということです。
2 つ目の制約はこのグレードに固有のものです。Cu-ETP は残留酸素を含みます。水素を含む雰囲気で焼なますと 水素が拡散し、酸化物の介在物を還元して結晶粒界に水蒸気を生じ、材料を不可逆的に脆化させます。EN 13601 が 水素脆化を生じないことの要求事項を持つのは、まさにこのためです。焼なましが工程に含まれるのであれば、炉の 雰囲気を管理するか、代わりに無酸素グレードを指定してください。
注文書の書き方
ブスバーの注文に最低限必要なのは、グレードと規格、質別記号、断面、材料の形態、そして証明書の要求です。 実測の耐力を加えてもミル側の費用は増えず、曲げにおけるずれの最大の要因がひとつなくなります。バーが、 スプリングバック補正テーブルを保持した 曲げ加工機 に載る のであれば、そのテーブルが引き当てに使うキーが質別記号です。質別が指定されていないということは、テーブルに 有効な行がないということです。
質別は通電容量には関係しません。それを決めるのは断面、配置、熱環境です。制約がそちらにあるのであれば、 ブスバー許容電流計算ツール が、バーがどう加工されたかとは独立に扱います。 2 つの判断は分離でき、分離しておくことで成形性の議論が寸法決定の議論に染み出すのを防げます。
